2023.04.11

浜名高校 入学式


春もゆる艸の穂赤し たまきはる命のいろの
  炎なすかげのしづけさ 春もゆる艸の穂赤し

 本校校歌を作詞した昭和の大詩人である三好達治が「春の旅人」の中で詠うように、令和五歳の卯月の始まりは、満開の桜の時期を経て、本校の窓から眺望できる周囲の山々の草木が萌えて新緑に染まり、活力みなぎる青陽を感じる時節となりました。
 このような中、御来賓各位の御列席を賜り、保護者、御家族の御出席のもと、令和5年度静岡県立浜名高等学校定時制過程の入学式を挙行できますことに、教職員を代表しまして、まずは感謝とお祝いを申し上げます。

 さて、大正2年4月、現在の浜北文化センターのある貴布祢の地に開学した「北浜裁縫女塾」を起源とする本校は、昭和23年の学制改革により「静岡県立浜名高等学校」と改称されました。そして、60年前の昭和37年9月に現在の西美薗の地に移転し、今年で111年目を迎えることとなります。これまで、北遠を代表する伝統校として、中央、地方を問わず各界で活躍する34,000人を超える優秀な人材を世に送り出して参りました。

 ところで、本校が所在する浜北に所縁のある近世・近代における多士済々の群像を辿れば、天竜川の治水に尽力した新原の松野彦助、貴重書の蒐集と教育に寄与した宮口庚申寺の明厳祖麟、『みつの春』を著して当地の俳諧の水準を示した小松の袴田南素、同じく小松で将来の医学発展のため膨大なカルテ集『三省録』を残した村尾留器、貴布祢では、数学者として遠州に和算を広めた藤川春龍、日本画家として東京美術倶楽部で活躍した山下青厓、遠州織物の発展に尽くした木俣千代八、静岡銀行の前身となる同心遠慮講を興した平野又十郎など枚挙にいとまがありません。こうした方々の活躍は、当地の幅広い分野でのレベルの高さを世に知らしめました。

 こうした先人を育てた基盤の上に立脚し、本校定時制のスクールミッションには「学ぼうとする志を大切にする」が掲げられています。「学ぶ」とは、学問・芸術・スポーツなど人々が知性や心身を育むすべての営みを指しています。そして、その先には、社会に参画する者として、バランスの取れた人格と見識が育まれ、あふれる情報の中から自分の進む道を選び出し、必要に応じて自他を変革していける力が備わるものと認識しています。

 そして、そのための道しるべとして、本校には校歌の歌詞から採られた「志はるかなれこそ 若き日を かくこそ惜しめ」の校訓があります。皆さんは、各々が「志」という「なりたい自分」の姿を持っていると思います。限りある若き日、どうか皆さんには、寸暇を惜しんで貪欲に知識を吸収するとともに、高校時代にしか体験できない諸活動に積極的に取り組むことを望みます。