2023.02.19

浜名高校 サッカー部 中日新聞2/18朝刊

浜名流 異端サッカー躍進

藤枝市で一月末にあったサッカー男子の県高校新人大会で、浜名高(浜松市浜北区)が19年ぶり3度目の優勝を果たし、「古豪復活」を印象付けた。復活の要因は、状況に応じて片方のサイドに選手が集まって「全員攻撃、全員守備」する異端なスタイルの徹底にある。長年、同じ戦術を採ることで精度が高まったほか、下級生へサッカースタイルを受け継ぎやすい利点もある。 
 「うちのサッカーは特徴的。気付きますか」。9日に浜北区であった紅白戦で、内藤康貴監督(43)が記者にそう問いかけた。
 選手がサイドライン付近でボールを受けると、味方の選手がボールへの距離を詰めていく。相手選手も同じサイドに集まり、逆サイドはがら空きになることも。このスタイルが内藤監督、浜名高サッカー部が磨き上げてきた「全員サッカー」の象徴だ。
 全選手が攻守に参加し、ボールと相手を見ながら立ち位置を変える。攻守の切り替えが早くなり、選手がプレーに多く関与できて経験を積める利点もある。
 2013年から同校で指導するが、練習内容はほとんど変わらない。三年生が引退しても戦術は同じ。DFで副主将の二年細見和志選手(17)は「あまりない戦術だけど、変わらないスタイルが大きい」と語る。
 難しさもある。相手選手もボールに集まるため、次のプレーを瞬時に判断しないといけない。主将の二年加藤千寛選手(17)は「全員が主将という気持ちで臨んでいる」。練習から指示を出し合い、頻繁にある選手同士のミーティングで反省点を互いに指摘。県内強豪校と比べ個人の能力では劣っても、「全員サッカー」を体に染み込ませてきた。
 目標はインターハイ、選手権を含めた三冠。今後は戦術面だけでなく、個人の技術向上も必要だ。古豪復活を確かなものにするべく、全員で力をつける。(長谷川竜也)
浜名高サッカー部 全国高校総体に7回出場を誇り、1970(昭和45)年、74年に優勝。ただ、2007年以降は全国大会に届いていない。1月の県高校新人大会の決勝は強豪・静岡学園と対戦。前半19分、高い位置でボールを受けたFW西岡修斗選手が決めた1点を守り抜いた


◆内藤監督「二刀流」生活が礎
異端の戦術を採用する浜名高の内藤康貴監督(43)=磐田市出身、浜松西高出=の指導の礎となっているのが、「二刀流」生活を送った一年間だ。
 磐田農高を指導する2012年、指導者の資質向上を目指す県の制度で、筑波大サッカー部へ留学した。大学の許可も得て、同年に風間八宏さん=静岡市清水区出身=が監督に就任したJ1川崎の練習を見学し、勉強する日々を始めた。
 午前6時半から筑波大で練習を見て、川崎市へ移動。川崎の午前練習、午後練習を見学し、夕方に大学の練習へと足を運ぶ生活を毎日繰り返した。「いかにパスをつなげるかなど、基本動作の大切さを学んだ」。自腹で川崎の宮崎キャンプに2週間訪れたり、高校への視察も重ねた。
 13年に浜名高のコーチ、翌14年に監督に就任。サッカー漬けの一年で培った知識に加え、OBや地元関係者からの助言もあって「全員サッカー」の土台を作り上げた。新人戦を制しても、まだ道は半ば。「目標は全国大会出場と、プリンスリーグ東海出場。そしてなによりも応援されるチームでありたい」