2022.09.14

浜名高校 2学期の始業式に寄せて


 令和3年度のNHK大河ドラマは徳川家康が主人公で、主演が嵐の松本潤さんだということで、家康ゆかりの地「浜松」も観光需要の拡大など経済効果を期待する声が聞こえてきます。
 家康は、生涯のうち青年時代の17年間、浜松を拠点に活動しました。しかしながら、この間は苦難の連続でありました。例えば、三方原の戦いで武田信玄に大敗して命からがら逃げ出したり、同盟相手である織田信長の圧力に屈して妻を殺害し長男を自殺に追い込んだりしました。ちなみに443年前の今日(8月29日)は、妻である築山殿が佐鳴湖畔で惨殺された日でもあります。
 このような難局を前に、家康はとにかく懸命にもがいていました。信玄・信長という高い壁を前にして、その場から逃げ出さずとりあえず向き合っていました。すると、信玄は間もなく病死、信長も3年後に本能寺の変であえなく命を落としました。つまり、壁の方が自ら崩れ、壁の前にいた家康はこれを乗り越えてさらなるスケールアップを果たし、その後の天下人への土台を築くことになったのです。

 話は変わりますが、フジテレビのプロデューサーや吉本興業の重役を歴任された横澤彪さん(故人)は、新人研修の場で、”君たちの前に立ちはだかる壁を自分一人で乗り越えることなんてできない。君達にできることは、その壁の前をとにかくウロウロすることである”と訓示したと聞いています。

 この訓示は、先ほどの家康の行動と通ずるものがあると思います。皆さんも、自分の前に立ちはだかる高い壁を前にしたら、諦めて立ち去るのではなく、まずは壁の前をウロウロするところから始めてみたらいかがでしょう。そのうち、壁のほころびが見えたり、壁を崩す大きな力が掛かったりして、光明が見えて来るかも知れません。