2022.04.21

浜名高校 令和4年度入学式に寄せて


 大正2年(1913)4月に開学した「北浜裁縫女塾」を起源とする本校は、昭和23年(1948)の学制改革により「静岡県立浜名高等学校」と改称され、当初は、貴布祢の地、現在の浜北文化センターのある場所に所在しました。
 当地に今も残る「貴布祢の森」は、遠江を代表する国学者の内山真龍が編纂した『遠江国風土記伝』によれば、『万葉集』にある「伎倍乃波也之(きべのはやし)」に比定され、古くから貴布祢神社が祀られてきました。当地は、聖地としての信仰の場であるとともに、文化や情報の集約する場、村の会合の会場としての政治の場、祭礼等を通じた娯楽の場となり、地域コミュニティを構築するうえで重要な役割を果たしてきました。つまり、こうした地域における「活力」と「進取」の気概を期待される場所にいざなわれて行くように、本校の最初の学び舎は当地に必然的に建てられたものと感じています。
 こうした因縁を背景に貴布祢の地で展開された「躍進浜名」の営みは、約60年前の昭和37(1962)年9月に現在の西美薗の地に移転しても脈々と受け継がれ、北遠を代表する伝統校として、中央、地方を問わず各界で活躍する28,300人を超える優秀な人材を輩出して参りました。

 本校が、教育目標として掲げている「高きを求めて文武両道に励み、『かがやく知性・細やかな感性・強い意思・たくましい体』を有する『志を持った心豊かな人間』」となることは、平坦な道ではありません。その多面性は、まさに本校のルーツである「貴布祢の森」と相通ずるものがあると感じています。新入生の皆さんには、本校の3年間を通じて、「知・徳・体を兼ね備えた志ある人」となることを切に願っているところです。
 そのための道しるべとして、本校には校歌の歌詞から採られた「志はるかなれこそ 若き日を かくこそ惜しめ」の校訓があります。生徒の皆さんは、各々が「志」という「なりたい自分」の姿を持っていると思います。限りある若き日、どうか皆さんには、この多感な時期に、寸暇を惜しんで貪欲に知識を吸収するとともに、高校時代にしか体験できない諸活動に積極的に取り組むことを期待しています。

貴布祢の森と「伎倍の林」を詠った万葉歌碑