2021.07.28

浜名高校 学校長挨拶「正義とは? ヒーローとは? 成長、前進、挑戦の夏に!」

7月21日(水)に、1学期終業式を行いました。
 引き続き、新型コロナウイルス感染症対策を行いながらの1学期でしたが、生徒、教職員の一人の感染者もなく学校生活を続けてこられたこと、笑顔と挨拶が行き交う明るくさわやかな校風の中で、生徒たちの努力、成長、活躍をたくさん見せてもらえたことを、とてもうれしく思います。保護者のみなさま、同窓会をはじめ、御支援いただいております、すべての皆様に感謝申し上げます。
 夏休みも、生徒たちにとって、成長、前進、挑戦の夏になるよう、努めてまいります。
 どうぞよろしくお願いいたします。

 以下に、終業式での話を掲載させていただきます。
 
 みなさん、おはようございます。
 いよいよ、1学期終業式を迎えることとなりました。
 まずは、お礼を言います。昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症対策をしながらの1学期でしたが、みなさんの努力、協力のおかげで、生徒、職員、一人の感染者もなく、学校生活を続けてくることができました。そして、日頃の授業や、2年間分の思いを乗せた文化祭などの学校行事、部活動の大会・発表等、様々な場面で、みなさんの努力、成長、活躍を見せてもらうことができました。本当にありがとうございます。改めてお礼をいいたいと思います。
 その1学期、みなさん一人一人にとっては、どのような意味を持つ期間となったでしょうか。今年度も、文と武、両面からの「挑戦」をお願いしてきましたが、どんな挑戦、そして自分の成長の跡を残せたでしょうか。このあと、通知表が渡りますが、その数値だけではない、学習面以外の面も含めた、自分による自分自身への評価ができるかと思います。ぜひ、しっかり振り返って、夏休み、2学期へのさらなる挑戦や成長につなげてほしいと思います。
 さて、今日は私からみなさんに、アンパンマンの話をさせてもらおうと思います。話をしたいと思ったきっかけは、これですね。1年生の英語の授業参観であり、今日、私がお話する内容は、もしかしたら、英語の先生から話を聞いたり、あるいは、8年前、アンパンマンの作者のやなせたかしさんが94才で亡くなられたころ、テレビや本で紹介されていたりした内容でもありますで、知っているという人もいるかもしれませんが、聞いてもらいたいと思います。
 アンパンマンというのは、知ってのとおり、困っている人がいればどこへでも飛んで行き、お腹を空かせて泣いている人には自分の顔を食べさせるという、ほかのヒーローとはちょっと変わった正義のヒーローです。主題歌の「アンパンマンのマーチ」、英語の授業では、英語で歌ってくれていたクラスもありましたが、日本語の歌詞を読んでみます。きっと歌える人も多いですね。「何が君の幸せ。何をして喜ぶ。わからないまま終わる。そんなのはいやだ。忘れないで夢を、こぼさないで涙。だから君は飛ぶんだどこまでも。そうだ畏れないでみんなのために、愛と勇気だけが友達さ。ああアンパンマン、やさしいきみは。行け、みんなの夢守るため。」
 実は、この主題歌。「何が君の幸せ 何をして喜ぶ」と主題歌として謳われているのは、作者のやなせさんが書いた2番の歌詞で、1番は「なんのために生まれて、何をして生きるのか」という、さらに哲学的な歌詞になっているのは、みなさん知っていたでしょうか。
 その理由にもつながる、アンパンマン登場の背景には、やなせたかしさんの戦争体験がありました。やなせさんの言葉を紹介します。「戦争は絶対やってはいけない。勝っても負けても。殺人をしなくてはいけないから。憎くもなんともない、しかも家族のいる相手を。戦争はいろんな理屈をつけて、それぞれの立場の正義を言い合うけれど、その正義は立場で逆転する。僕らは中国の民衆を救わなくちゃいけないと言われて戦争に行ったけど、終わったら、こっちが非常に悪い奴で侵略していたとなった。戦争には、真の正義はない。では、立場で逆転しない、絶対的な真の正義とは何か。それは、ひもじい人を助けること。飢えている人に一切れのパンをあげること。それは、どこへ行こうが正しい。それが真のヒーロー。そう思ったことが、アンパンマンのもとになった。」と語っています。
 やなせさんが兵隊時代経験した、たくさんのつらい体験は、空腹以外は横になっていればなんとか回復できたそうです。でも、空腹だけはだめで、人間にとって飢えることが一番つらいことを身にしみて体験したとのことで、正義の味方だったら、最初にやらなくちゃいけないことは、飢える人を助けること。それが、アンパンマンを描く動機になったというわけです。
 そんな やなせさんが描いた最初のアンパンマンは、英語の教科書にも少し紹介されていましたが、世界中の飢えた子にアンパンを届けるちょっと太った人間のヒーローで、最後は許可なく国境を超えたため、撃ち落されてしまうという物語だったそうです。それが、アンパンでできている自分の顔を食べさせるという、今のアンパンマンになっていったのにも、理由がありました。ちょっと紹介します。「我々人間の大多数は強くはない。でも、川でおぼれている子どもがいれば、自分の命を顧みず、川に飛び込んだりする。正義は、自分がまったく傷つかないで行うのは難しいけれど、誰でも、どんな弱い人でも、遭遇した場面で強い力を発揮して、正義の味方になることができる。」そんな思いを含めたかったとのことです。確かに、アンパンマンは、ちょっと雨に濡れても、泥がついても、顔が曲がっても弱る。自分の顔を食べさせてあげると、エネルギーが落ちる。バイキンマンに押しつぶされたり、ジャムおじさんに「助けて」と弱音を吐いたりする。他のヒーローと違って、弱く傷つきやすい。でも顔を作り直してもらうと、また元気に飛び立つ。先ほどのやなせさんの思いが、弱ったり傷ついたりしても愛と勇気で立ち向かっていくアンパンマンというヒーローにしたというわけです。
 そのアンパンマン、仲間もたくさんいて、やなせさんは、半分以上忘れているとのことですが、2000以上というキャラクターの数は、アニメのキャラクターとして世界で最も多く、ギネス記録にも登録されています。
 そんなアンパンマンについて、誕生当時は抗議の手紙もあったということで、2つ紹介します。「顔を削るのは残酷」との手紙には、「アンパンが食べられなかったら、それは、まずいパンになってしまう。子どもにとって一番大切なのは食べること。食事にも菓子にもなるということでアンパンを主人公にしたから、食べられるのは当然」と返事を書いたそうです。もう一つ。アンパンマンという光を描くには、影も描かなきゃ、ということで登場させた、かたき役のバイキンマンですが、「そのバイキンマンをアンパンチでやっつけるのは、暴力ではないか」という声には、「これは暴力という話ではない。食品とばい菌の話。我々はばい菌を迎え撃つ。すると、新型のばい菌がまたできて、新しいワクチンをまたつくる。そういう戦いであるから、アンパンマンとバイキンマンの戦いは永遠に続く。そして、アンパンマンは絶対に武器をもたず、必ず素手で戦う。逆にバイキンマンはいろいろなものを持ってやってくる。我々の健康は、よい菌と悪い菌のバランスがちょうどいい具合に保たれてこその健康。だから、ばい菌というのは、やられるとまた次のものが出るけれど、その戦いの中で健康を維持しているという原則をこの話の中に入れている。」と話したとのこと。なかなか奥深い話であり、コロナはウイルスですが、新型コロナにも早く打ち勝ちたいと思うところです。
 さて、主題歌の「アンパンマンのマーチ」に戻ります。東日本大震災のころ、震災直後からラジオ局にリクエストが殺到したという話を聞いたことがあるでしょうか。
 その理由ともなったこの歌の一番の詩を紹介します。「何のために生まれて、何をして生きるのか。答えられないなんて そんなのは嫌だ。今を生きることで、熱い心燃える。だから君は行くんだ 微笑んで。そうだうれしいんだ 生きる喜び。たとえ胸の傷が痛んでも。ああアンパンマン やさしい君は 行け みんなの夢守るため」です。「何のために生まれて何をして生きるのか」は、漫画家としてなかなか売れなかったやなせさん自身の長い間の命題でもあったとのことですが、生きることをたたえたこの詩・歌に、本当に多くの人たちが、励まされてきました。もしかしたら今、悩んでいる人もいるかもしれません。でも、「生きているだけですばらしい」。そんな思いも、今日はみなさんに伝えさせてもらいます。
 さて、明日からの夏休み。みなさんはどのように過ごそうと思いますか。進路実現に向けて力をつけるべき3年生は勝負の夏です。そして、全校生徒の皆さん一人一人が、自分の希望や目標、土台を確認しつつ、勉強や部活動などに努力をする。前進の、成長の、そして挑戦の夏にしてほしいと思っています。東京オリンピックが始まり、8月には終戦記念日もやってきます。ヒーローとは、正義とは何か。「アンパンマンのマーチ」に謳われている「今を生きることで、熱い心燃える」ということを通して、「何のために生まれて 何をして生きるのか」「何が君の幸せ 何をして喜ぶ」という、永遠ともいえるこの命題の答えに触れる、そんな夏休みを過ごしてくれることを期待します。
 一層たくましくなった皆さんと、2学期、元気に会えることを願って、私からの終業式の言葉といたします。健康に留意して、よい夏休みを過ごしてください。元気でね。終わります。