2021.05.09

浜名高校 校歌 三好達治作詞 「校歌作詞時の講演音源」発見


<静岡新聞5月6日夕刊> (PDF: 3370.98KB)

 三好達治先生が歌詞に込めた思いを、意味を変えずに少し短くしながら、私の声で紹介させてもらいます。
 まず1番の歌。「水清ら 四時に平らに 天つ空 四方の山影」この3行は、浜名湖を対象としてそれを言っておるのでございますが、象徴的といいますかね。遠江、水が清らに平らかであって、その水面に高い空、四方の山影が映っている。それは、海の方からいいますと、清く平らかでいて、高い空や山影をそういうふうにとらえる。そういう学問の仕方、生き方、勉強の仕方でこの学校の3年間を終わっていただきたいという気持ち、学校が終わってからもこういう心持を持ち続けていただきたいという風な気持ちが作者としては、その3行にこめたのでありまして、これはまあ、浜名湖には大変すみませんが、湖水という、現実の方こそ借り物だと、そんなふうに、この校歌を読んでいただきますと、作者は大変ありがたいのであります。
 2番にいきますと、同じような風でありまして、校長先生や鈴木先生が、風向きのある日には、海の音が聞こえる、確かに潮騒の音が聞こえるとおっしゃいましたので、それを先ほどの浜名湖と同じように環境を借りまして、本を読むときに、ただまあ、表現だけを読むのではなく、遠くの方から海の音が耳を傾けると聞こえてくるというふうに、皆さんが本をお読みになったときに、外国のもの、あるいは、ずっと数百年とか、年月を経た遠い時代のもの、そういうみなさんの、現在我々が生きている場所から非常に隔たった遠い、あるいは、意味の上からいいましても取りにくく、考えにくくて、そういう意味からいっても遠い、そういうものを書物を読みながら、ちょうど遠くから聞こえてくる海の音が普段は聞こえないんでありますが、たまたま聞こえると、また、聞こえても注意しないでいると絵空事になってしまうんでありますが、ふと気をとめると、なるほど海が鳴っているということがわかるというふうに、書を読んでほしい。さきほどの浜名湖といい、遠くから波の音がきこえるという、その自然現象といい、そういうものは全部仮事であって、こういう心持で物は読んでもらいたい、というふうなつもりを込めたつもりでございました。
 3番は、論語、孔子が、「行くのもはかくがごとし 昼夜をおかず」と言って川のほとりで歎かれたという、これはいろいろ説がありますが、一つの説に、時間は流れてやまない、昼も夜も休まないから、たゆまず勉強しなければならない、と孔子がおっしゃったということが定説になっておりますので、天竜川のほとりにおいても、そういう心持でいたいという、これも仮作であります。
 そんなふうに、歌には、ゆえんがある、歌の持つ心、言葉の響き、意味、言葉のもつ感触、響き合いというものを、聞く人が創造する、クリエイトする、相互に働いて、今、私が申し上げたことが許されるような意味合いが強いのが詩歌でありまして、なかなかできあがらないことで、ご迷惑をおかけしました。

という、以上、1番から3番までの内容についての部分を、少し短くさせていただきながら、紹介させていただきました。
 1番は、浜名湖を借りものとしての学問や勉強の仕方、清く平らかな心で学問に向き合い吸収してほしいという願いを、2番は潮騒の音を借りての書物への向きあい方を、3番は天竜川を借りての時を惜しむ大切さを謳い、そして、4番の「志はるかなれこそ」につながっていく、という、格調高い本校の校歌について、語られています    < 浜名高校学校長 三科真弓>