2021.04.11

浜名高校 令和3年度がスタートしました。


6日の新任式・始業式、7日の入学式により、令和3年度がスタートしました。
 校内は、明るくさわやかな生徒たちの笑顔であふれています。
 369名の新入生を迎え、全校生徒1101名の、令和3年度、浜名高校のスタートです。
 今年度も、どうぞよろしくお願いいたします。
 以下に、リモートで実施した、6日の始業式式辞を掲載させていただきます。
 
 皆さん、おはようございます。そして、進級おめでとうございます。
 いよいよ令和3年度の、新しい学年やクラスでの学校生活が始まります。
 春休みはいかがでしたか。2週間ちょっとの期間でしたから、あっという間だったという人も多いことと思います。部活動の大会もありました。インハイ予選や発表会を間近に控えて、活動に打ち込んだ人も多いことでしょう。勉強を頑張ってもくれたことでしょう。今のところ、事故や怪我、そして新型コロナウイルス関係の報告もなく、元気そうな表情の皆さんを迎え、新年度をスタートできること、とてもうれしく思います。
 「人は、節目で伸びる」と言われます。竹は、根から吸い上げた養分を伸びる力に変える成長点が節目にあって、ぐんぐん伸びるわけですが、高校生活の中にも、さまざまな節目があります。新しい学年に進級した今日は、皆さんにとっての最も大きな節目です。でも、節目だから、誰もが伸びる、成長するというわけではありません。節目にあたって、目標を立てる。よし、これを頑張ろう、と決意をする。その目標が自分にとって、本当に大事な目標であれば、必死で頑張る、頑張ることで自信がつく、そして、伸びていくということになります。ぜひ「志はるかな」目標をもって、「若き日」を惜しんでほしいと思います。そのために、3学期の終業式でお話したとおり、今年度も引き続き、みなさんには、文武両面からの「挑戦」をキーワードに前進していってもらいます。自らが「挑戦」すること、挑戦する方法、プロセスをしっかり考え、1年を通して、アプローチしてほしいと思います。挑戦においての文武両道の「文」は学習面や進路面、「武」は部活動、生徒会活動、学校行事、人間性等、幅広くとらえてくれてかまいません。今年は浜名手帳の中に、挑戦シートの印刷もしてもらいました。竹は、節目の数が竹の子の時からほぼ決まっていると言われますが、その竹と異なり、人間は自分で節目を作り出すことができます。Plan、Do、Check、Action、あるいは、After Action ReviewのPDCAサイクルやAARを繰り返すこと。そのたびに節目がつくられ、成長が訪れます。大きな節目である今日、「志はるかな」目標をたて、また、この1年、様々な節目を自分自身で作り出しながら、着実に前進する。そんな1年にしてほしいと思います。
 そんなみなさんに、今日は、改めて校歌の話をさせてもらいます。
 実は、約1か月前の3月3日、東京在住の熊木さんという方から、校長あての小包をいただきました。中身は、昭和32年11月、本校校歌がはじめて、生徒たちにお露目された、その式典の際の三好達治先生、ご講演の音声テープです。熊木さんの亡くなられたお父様が 筑摩書房にお勤めであり、三好達治全集の編集を担当されていて、その関係資料としてご自宅に残されていたとのことで、実物は、この、昔使われていたオープンリールのテープ。どこの学校のものかわからないけれど、その学校にとっては、大切なものかもしれないと、お父様の遺品整理の際も処分をせず、そのままご自宅に残しておいてくださり、この度、CD化できる業者を知ったのでCD化し、浜名高校の校歌であることがわかったとのことで、お手紙と共に、現物とCDをお送りいただきました。
 講演の内容は、三好達治先生の、校歌作成までの苦しみ、実は、なかなか作詞ができず、4年という長い年月をかけられ、最後は、ここ浜北の地にしばらくの間逗留されてヘリコプターで上空からこの地も眺められたりしているんですね。その際の苦しみや、歌詞に込めた思いなどが語られていて、本校の歴史として貴重なものであるとともに、三好達治先生の、その生の声に、話に、私自身も大きく感動をいただきました。また、お送りいただいた熊木さんのお気持ちに、心が熱くなりました。機会をつくって、皆さんにも聞いてもらいたいと思っていますが、今日は、その中から、三好達治先生が歌詞に込めた思いを、意味を変えずに少し短くしながら、私の声で紹介させてもらいます。

 まず1番の歌。「水清ら 四時に平らに 天つ空 四方の山影」この3行は、浜名湖を対象としてそれを言っておるのでございますが、象徴的といいますかね。遠江、水が清らに平らかであって、その水面に高い空、四方の山影が映っている。それは、海の方からいいますと、清く平らかでいて、高い空や山影をそういうふうにとらえる。そういう学問の仕方、生き方、勉強の仕方でこの学校の3年間を終わっていただきたいという気持ち、学校が終わってからもこういう心持を持ち続けていただきたいという風な気持ちが作者としては、その3行にこめたのでありまして、これはまあ、浜名湖には大変すみませんが、湖水という、現実の方こそ借り物だと、そんなふうに、この校歌を読んでいただきますと、作者は大変ありがたいのであります。
 2番にいきますと、同じような風でありまして、校長先生や鈴木先生が、風向きのある日には、海の音が聞こえる、確かに潮騒の音が聞こえるとおっしゃいましたので、それを先ほどの浜名湖と同じように環境を借りまして、本を読むときに、ただまあ、表現だけを読むのではなく、遠くの方から海の音が耳を傾けると聞こえてくるというふうに、皆さんが本をお読みになったときに、外国のもの、あるいは、ずっと数百年とか、年月を経た遠い時代のもの、そういうみなさんの、現在我々が生きている場所から非常に隔たった遠い、あるいは、意味の上からいいましても取りにくく、考えにくくて、そういう意味からいっても遠い、そういうものを書物を読みながら、ちょうど遠くから聞こえてくる海の音が普段は聞こえないんでありますが、たまたま聞こえると、また、聞こえても注意しないでいると絵空事になってしまうんでありますが、ふと気をとめると、なるほど海が鳴っているということがわかるというふうに、書を読んでほしい。さきほどの浜名湖といい、遠くから波の音がきこえるという、その自然現象といい、そういうものは全部仮事であって、こういう心持で物は読んでもらいたい、というふうなつもりを込めたつもりでございました。
 3番は、論語、孔子が、「行くのもはかくがごとし 昼夜をおかず」と言って川のほとりで歎かれたという、これはいろいろ説がありますが、一つの説に、時間は流れてやまない、昼も夜も休まないから、たゆまず勉強しなければならない、と孔子がおっしゃったということが定説になっておりますので、天竜川のほとりにおいても、そういう心持でいたいという、これも仮作であります。
 そんなふうに、歌には、ゆえんがある、歌の持つ心、言葉の響き、意味、言葉のもつ感触、響き合いというものを、聞く人が創造する、クリエイトする、相互に働いて、今、私が申し上げたことが許されるような意味合いが強いのが詩歌でありまして、なかなかできあがらないことで、ご迷惑をおかけしました。

という、以上、1番から3番までの内容についての部分を、少し短くさせていただきながら、紹介させていただきました。
 1番は、浜名湖を借りものとしての学問や勉強の仕方、清く平らかな心で学問に向き合い吸収してほしいという願いを、2番は潮騒の音を借りての書物への向きあい方を、3番は天竜川を借りての時を惜しむ大切さを謳い、そして、4番の「志はるかなれこそ」につながっていく、という、格調高い本校の校歌について、語られています。
そして、この三好達治先生のご講演のあと、当時の生徒さんたちに披露されたのが、3月19日、3学期終業式でみなさんに聞いてもらった校歌だったわけです。
 今日、このあと、みなさんには校歌を歌ってもらいますが、今お話しさせていただいた、三好達治先生の歌詞に込めた思いを、ぜひ心にもって、歌い続けてほしい、そして、校歌の意味を自ら体現していってほしいと思います。
 3年生は、高校生活3年間の総仕上げの1年となります。勉強にしても、部活動にしても、いままで積み上げてきたものを、自分の財産として総括し、まとめあげ、開花させてください。それぞれの進路を決定する大切な1年。覚悟をもって、努力を継続してください。
 2年生は、部活動や生徒会活動などでも学校の中心になっていきます。そして、じっくりと力を蓄え、将来の目標を見定めていく大事な1年。ここでの頑張りが来年につながります。
 どうか、皆さん一人一人が、健康を保ちつつ、「挑戦」の心で、自分自身を築き上げる素晴らしい1年を過ごしてくれますように。皆さんの健康と活躍を、心から願って、令和3年度のスタート、私からの始業式の言葉とさせていただきます。みんなで元気に頑張っていきましょう。