2019.04.13

新任式・始業式

4月8日(月)校長先生をはじめ、14人の新しい先生方をお迎えし、平成最後(令和元年)の新年度がスタートしました。

平成31年度1学期始業式訓話          平成31年4月8日
今日から平成31年度の、そして5月からは令和元年度の、新しい年が始まりますね。
皆さん、春休みはどのように過ごしたでしょうか。約2週間でしたから、あっという間だったという人も多いのではないかと思います。部活動の大会もいろいろありました。運動部の人は、インターハイ予選も間近に迫り、追い込みのとき。文化部の人も発表会などに向けて、部活動に打ち込んだという人も多かったことと思います。新3年生を中心に、勉強を頑張ったという人もいることでしょう。今のところ、事故や怪我の報告もなく、みなさんの元気そうな表情を見ることができて、うれしく思います。
「人は、節目で伸びる」と言います。高校生活の中には、さまざまな節目がありますが、新しい学年に進級した今日は、皆さんにとっての最も大きな節目です。でも、節目だから、誰もが伸びる、成長するというわけではありません。節目にあたって、何か目標を立てる。よし、これを頑張ろう、と決意をする。そしてその目標が自分にとって、本当に大事な目標であれば、そのために必死で頑張る、頑張ることで自信がつく、そして、伸びていく、ということになります。「志はるかなれこそ 若き日をかくこそ惜しめ」。すばらしい校訓です。志、目標をもって、日々を大切にする。みなさんにとっての成長の1年にしてほしいと思っています。
そんなみなさんに、今日は私からお話する初めての機会。期待をこめて、好きな言葉である、「未見の我」という言葉を紹介したいと思います。
「未見の我」知っている人いるでしょうか。未来の未、見るの見と書く「未見の我」という言葉です。意味は、「いまだ見たことのない自分」「自分が知らない自分」という意味です。この「未見の我」、今年は「平成」から「令和」へと変わっていきますが、江戸時代から明治時代へと動いていったころ、幕末の動乱期、長州藩士、今の山口県ですね。その藩士で松下村塾という塾を開いた吉田松陰が、高杉晋作、久坂玄瑞など、後に明治維新につながる重要な働きをし、新しい時代を作っていった自分の弟子たちに言ったというのが、この「未見の我」という言葉です。「いまだ見たことのなかった自分を目指しなさい。心は熱く、本気でやってみなさい。必ず達成します。運命を作りなさい。」との内容であったと伝えられています。言い換えると、毎日をなんとなく過ごすのでは「未見の我」に気付くことはできない。「未見の我」に気付くためには、何かに本気で取り組み、外からの刺激に触れて、自分自身を見つめ直さなければならない。本気で取り組むときにこそ、自分の中に眠っている才能が発揮される。成功であれ、失敗であれ、未だ見ぬ自分に出会えたときに、人は感動し成長することができる、という意味だと解釈されています。
この「未見の我」という言葉については、詩人の安積得也という人、評論家、官僚でもあった人ですが、その方の詩も知られています。読んでみたいと思います。      
 
「未見の我」 安積得也
昼なほ暗き大森林の 何千億の樫の葉から 一番よく似た二枚を拓って較べて見給え
不思議ですねえ 一枚だって真(まっ)たく同じものはないのだから
植物学者の語る事実が 強い強い暗示を 人間の個性の問題に投げかける
思へば愕(おどろ)かずにはゐられない 人間の一人一人が
その人でなければ持っていない特質を 造化の主から授かってゐるとは
人皆英雄! そうだ 内に隠れて見えないけれども
現在(いま)こそ内に眠り底に潜んで 自分にも他人にも発見(わか)らないけれども
この弱小な我の中にこそ 「未見の我」の偉大な姿が 隠れてゐるのだ
現在の我とは比較にもならぬ 強く正しく温かく清い 偉大なる我が潜んでゐるのだ
オ目出度い予想? 誇大妄想? 嘲笑(わら)う者をして嘲笑(わら)はしめよ
ほよほやの人間は静かに信ずる 
「未見の我」よ善良なれ 「未見の我」よ偉大なれ 明日は今日よりも完全なれ 
明年(みょうねん)は今年(こんとし)よりも さらに勇壮にして独立にして謙虚なれ
友よ歎くを止めよ 現在の「我」の貧弱さに 失望する勿(なか)れ
若き我等こそ 「我」の中(うち)の「未見の我」を確信して
貴い発言の努力を 楽しもうではないか

少しむずかしい言葉もありましたが、人間の尊厳や可能性を信じる、すばらしい応援歌だと思います。そして、この詩に歌われているとおり、私達には、一人一人、すばらしい個性、「未見の我」があるはずです。皆さんには、自分の中の「未見の我」を信じ、出会ってほしい。「未見の我」に出会う喜びを積み重ねることで、人間としての価値を高めていってほしい、そのための挑戦や努力をしてほしいと思っています。
「平成」から「令和」へと、新しい時代を生き、活躍すべきみなさんです。
そんなみなさんにとってのこの1年。どう過ごしますか。3年生は、高校生活3年間の総仕上げの1年。勉強にしても、部活動にしても、いままで積み上げてきたものを、自分の財産として総括し、まとめあげ、開花させる年になります。それぞれの進路を決定するという大切な年でもあります。
2年生は、部活動や生徒会活動など、学校の中心となっていきます。また、じっくりと力を蓄え、将来の目標を見定めていく大事な1年。ここでの頑張りが来年につながります。
それぞれに、かけがえのない年となることを祈ります。
皆さんが皆さん自身の「未見の我」に出会い、素晴らしい自分自身を築き上げる1年にしてくれることを願って、今日、始業式の言葉とさせてもらいます。みんなで頑張っていきましょう。終わります。