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平成29年度 第3学期始業式
1 「良き習慣は才能を超える」
皆さんあけましておめでとうございます。年が改まって平成30年、2018年となりました。新しい年を迎えるとともに、各自がそれぞれ目標を持って今日、この3学期の始業式に臨んでいることだと思います。まずはその目標を大切にしてください。とともに、目標に向けた行動を、どんな小さなことでもいいですから、実行して、継続する、やり通す決意を固めてほしいと思います。
人間には習慣というものがあります。何事も習慣化することで、意外に、容易に目標が達成できるものです。それ故、昨年4月の始業式でも伝えましたが、「良き習慣は才能を超える」という言葉もあるほどです。まずは 1 週間、次に 1 か月と、自分の中で目標に向けた行動の習慣づくりを心掛けてください。皆さんの今年の成長を祈ります。
2 「汎用性人工知能」
さて、例年のことですが、今年も正月、新聞に今年の予測や未来の予測に関する記事が多く出ていました。
その中で、ある新聞に、駒澤大学の井上智洋准教授が、人工知能(AI)が社会をどのように変えていくかという未来予測を寄稿していました。
簡潔にまとめると、現在のAIは、iPoneなどで使われている「Siri」や一昨年、韓国の世界最強の棋士を破った「アルファ碁」などに代表される、一つの特化された課題をこなす「特化型人工知能」というものですが、この先、AIは、2030年頃には、人間のように様々な知的作業をこなすことが出来る「汎用型人工知能」に進化し、その結果、これを搭載したロボットとの組み合わせで、人間の仕事をほとんど奪ってしまうという内容でした。
井上准教授の予測では、そのような近未来の社会では、人間に残された仕事は、「Creativity 創造性」「management 経営・管理」「Hospitalityもてなし」の3つの分野に限られてしまい、極端な話、全人口の1割程度の人しか働かなくてすむ社会が来るというのです。
ちょっと想像がつきませんが、2030年頃といえば、皆さんが20代の後半を迎えているころです。他人ごとではないと思います。興味がある人は、井上准教授の著書『人工知能と経済の未来:文春新書』を読んでみてください。
3 「グライダー人間」
次に、それでは、このような予測に向けて、高校生の皆さんには、今後、どのような力が求められるのか、ということについて話を進めたいと思います。
皆さん、「グライダー人間」という言葉を聞いたことがありますか。今から20年以上前に、当時、お茶の水大学の名誉教授だった外山滋比古さんが、その著書「思考の整理学:ちくま文庫」の中で使った言葉です。
「グライダー人間」とは、その名の通り、自力飛行のできない人間のことで、もっと具体的に言うと、先生に引っ張られて受身で勉強することは得意で、学校で教えられたことは非常によくできる、つまり優等生なのですが、大学に入って論文を書く段階になると、自分で調べたり考えたりすることができずに、立ち往生してしまう、当時増えつつあった大学生たちの特徴を示したものです。
外山さんは、この著書の中で、「人間にはグライダー能力と飛行機能力とがある。受動的に知識を得るのが前者、自分で物事を発明、発見するのが後者である。両者はひとりの人間の中に同居している。グライダー能力を全く欠いていては、基本的知識すら習得できない。何も知らないで、独力で飛ぼうとすれば、どんな事故になるかわからない。」とする一方で、「指導者がいて、目標がはっきりしているところではグライダー能力が高く評価されるけれども、新しい文化の創造には飛行機能力が不可欠である。」と指摘しています。
また、ここが肝心なのですが、「今後は、「グライダー人間」の専業では安心していられない。コンピューターという、飛び抜けて優秀なグライダー能力の持ち主が現れたことで、自分で飛翔できない人間は、コンピューターに仕事を奪われる。」と言い切っています。
20年以上前に、先ほど触れた「汎用性人工知能」の出現による社会の変化を予測していたわけですね。その慧眼には改めて感心します。
そして、この指摘のとおり、これからの社会では、間違いなく飛行機能力が求められます。
飛行機能力の源となる推進力を身に付けるためには、何事にも関心や意見を持ち、自ら調べ、自分の頭で考え抜くといった、前向きな問題意識や探求心、さらには、時には壁にぶつかるようなことがあっても、苦しいことに耐えて辛抱する気力、精神力が必要となります。
新しい年の始まりに当たって、生徒の皆さんには、学習や部活動、学校行事の中で、高校生に必要とされるグライダー能力の上に、この飛行機能力を身に付けることを意識しながら、「自ら調べ、自ら考える、また考え抜く」姿勢を大切にして学校生活を送ってほしいと思います。
最後に3年生の皆さん、皆さんの多くは、今週末に迫った大学入試センター試験を受験します。自分自身の可能性を信じて、最後まで全力を尽くして頑張ってください。人事を尽くして天命を待つ。やるべきことをやれば結果はついてきます。皆さんの健闘を心から祈り、第3学期始業式の挨拶とします。