2017.12.30

平成29年度 2学期終業式

 今日で2学期が終わりとなります。
 生徒の皆さんにとって、この2学期は、どのような学期だったでしょうか。
 明日から始まる冬休みの前に、自分自身の学習や部活動、また行事などへの取組みなどを、今一度、振り返ってみてほしいと思います。
さて、私が学期の初めに、ATT、(Action- Thinking -Teamwork)という言葉を紹介しながら、「指示待ち人間になるな、主体的であれ。」「自分の可能性に向けて、一歩前に踏みだす姿勢が大事だ。」という話をしたことを覚えていますか。
 今日は、再びこれに関連して、「主体的に学ぶ」ということについて、少し角度を変えたところから、話をしたいと思います。
 突然ですが、皆さんは、英語で「Massive Open Online Courses、略称でMOOC(ムーク)」、日本語では「大規模公開オンライン講座」と呼ばれる、2011年ごろから始まったインターネット上の学習配信サービスがあるのを知っていますか。
 実は、私もこの秋に聴講した、ある講演会の中で、改めてその存在を知りました。
 このMOOC(ムーク)というサービスの特徴を簡単に整理しますと、
(1) 貧富の差に関係なく、インターネットさえつなげば、誰でも無料で、世界中の有名大学が配信するオンライン講座を受講できる。
(2) 配信されている講座は、ハーバード大学などの世界のトップレベルの大学の教授による講義で、この中には日本の東京大学や京都大学も含まれている。
(3) 以前からあった、動画を一方的に見るだけの、いわゆる一方向の公開授業ではなく、受講生には、宿題の提出が求められ、中間試験、期末試験もあり、数週間の授業の受講が終われば、受講した大学から修了証がもらえる。
(4)現在、受講生の数は、世界中で、数万人から数十万人にも上る大規模なものとなっており、疑問点があれば世界中の受講仲間から、専用の掲示板を使って、相互に意見を交わし合うことで、アドバイスがもらえるというシステムがあること。
という点です。
 そして、ここが肝心なのですが、
(1) このようなMOOC(ムーク)の受講を修了してその修了証を持つことは、その大学の単位修得に代わるものではありませんが、世界トップレベルの学力を持つという信頼性を高めているというのです。
(2) また、MOOC(ムーク)の修了証を得たことで、実際に、世界規模で展開している企業などへの就職活動に役立てた実績を持つ人たちがでてきています。
 その一例として、今から4年前、2013年9月に、NHKのテレビ番組でも紹介されましたが、この無料オンライン講座をきっかけに、世界的に有名になった2人の若者がいるので紹介します。
(1)パキスタンの、当時、中学1年生、12歳の女子生徒 ハーディジャ・ニアジ さん
 宇宙物理学などの11の講座をいずれも優秀な成績で終了した、天才少女として、世界的に有名になりました。彼女は、もともと理数系が得意な生徒だったのですが、先ほど紹介した専用の掲示板の中で、自分の疑問点を他の受講生との情報交換で解決することで、学習を深めていったと言われています。これは、君たちが、普段の授業の中で行っている、グループ討議の、オンライン版、世界版といったものです。
(2)モンゴル、ウランバートルの、当時、17歳の男子高校生 バトゥシグ・ミャンガンバヤル 君
 彼はアメリカへの留学を希望していましたが、経済的な理由から実現は難しいと感じていました。そんな時、MIT(マサチューセッツ工科大学)の無料オンライン講座を受講し、全ての課題と試験で満点を獲得、講座を担当する教授の強い推薦を受けて留学が決まり、夢に見ていたMITに入学しました。学費も免除されることになったというのです。
 そして、その時のMITの担当教授のコメントが、またすばらしいのですが、「オンライン講座を始めたことで、これまでは入学してこなかったような国の最高レベルの学生がやってくるようになりました。」「将来、研究者や教授として貢献してくれるでしょう。」とさえ述べているのです。
 何か、これからの社会の在り方の、方向性を指し示すような言葉だと思います。
 どうでしょうか、現在、世界には、今紹介したMOOC(ムーク)のような学習のシステムの中で、まさに主体的に学んで、意欲と努力で、国境を越えて自分の可能性を高め、チャンスをつかもうとしている、君たちと同年代の若者がいて、その数は着実に増えていいます。
近い将来、君たちが生きる時代は、予測がつかないような変化の激しい社会だと言われていますが、このような人たちと仕事をしたり、時には競争をしたりしながら、一緒になって社会を築き上げていく、そういう社会が確実にやってくることは間違いありません。
 そういう中で、一方では「最近の日本の高校生は内向きだ」とよく言われています。大変残念なことです。だからこそ、君たち浜名高校の生徒の皆さんには、この大きな流れに乗り遅れないでほしいと願います。
 とはいっても、いきなり環境を変えられるわけではありません。
 今、自分がやるべきことをしっかりと自覚して、目標をもって高校生活に主体的に取り組むことが何より大切だと思います。そういう高校生活の中で培われた人間性こそ、将来、社会の中で必ず役に立つものだと思います。
 今日は、少し話が大きくなりましたが、生徒の皆さんに、主体性、自主性を持った高校生活を送ることの大切さを、今一度、年の終わり伝えておきたいと思い、話を進めてきました。

 最後に3年生に一言。
これから卒業そして進路実現を獲得するまでの期間のなかでは、恐らく人生の中でも最大級の試練を経験することになる人がほとんどだと思います。しかしながら、これを乗り越えることが皆さんの人間の幅を一回り大きくすることは間違いありません。ぜひ頑張ってほしいと思います。同時に、ご家族や先生方をはじめ、皆さんの周りの人たちは全員が、この試練の期間を通した君たちの成長を応援し、祈っていてくれていることを伝えておきたいと思います。
 それでは、来年1月9日の3学期の始業式で、有意義な冬休みを過ごした皆さんに再び会うことを楽しみにしています