2011.08.10

28回生 平松秀介「過去・現在・未来」

浜名高校大同窓会事務局では、さまざまな卒業生に「浜名高校」
時代を語っていただく寄稿をお願いしています。
第1回は28回生の平松秀介さんです。


あの頃の笑顔は、今もあるだろうか 熱き思い出、スポーツに
うちこみ、クラスでは片思いの子に胸をときめかせ、将来はど
うなるだろうかと不安な毎日。

今思えば、あの頃が一番輝いていたかもしれない。
でも、あの頃の友の顔を思い出せば昨日のことのように歯車が
逆転していく

久しぶりに、高校時代の卒業アルバムを開いてみると、そこに
は35年前の友の顔があった。編集後記に、過去、現在、未来と
いう言葉を使っていた自分の姿があった。

何とか学年間のコミニケーションをはかろうと「あいさつ運動」
をすすめ、校門の前に立ち登校してくるみんなに声をかけていた。

おはようの声に、大きな声でかえしてくれる後輩もいれば、恥
ずかしそうに下を向いて通りすぎる女子もいた。

サッカーグランドからは、大声で激をとばす選手の声。
汗がしたたるのがめに見えるようだ。
花壇をつくろうと、放課後各学年ごとに、土を運んだ一輪車の
感触が今も手に残っている。

体育の授業を、体育館で女子と一緒に行う機会があった時は、
カッコつけてはりきっていた。
ひとつひとつの出来事が、短編小説のようによみがえってくる。

現在私は今、痴呆症の介護現場にたっている。
自分の子供や家族の顔も忘れ、ベッド上で鼻から栄養をとりつ
づけ、その日を生き続けている利用者の一人。

早く死にたいけど、なかなか迎えが来ないわねと独語のように
つぶやく90歳すぎの利用者。

「また明日ね」と明るくあいさつをかわした利用者も、次の日
朝出勤してみると姿が見えない。「明け方に亡くなったわよ」
と夜勤のナースから申し送り。

入所した頃は、笑いながら歩きまわっていた女性も、いつしか
食堂に姿を見せなくなり、ベッドの上でのオムツ生活。

毎日が葛藤に悩まされ、もう一日もう一日と自分に言い聞かせ、
気がつけば知的障害者の指導員を辞めてから10年の歳月が過ぎ
ていた。

あなたは人生をどう生きていますかと問いかけられたら、何を
答えられるだろうか。
高校時代ホームルームの時間に、将来は何になるかと聞かれた時、
福祉の道に進むよと言った。

でも20代は希望をもって入社した会社も、社長が失踪し倒産。
暴力団の取立てというTVドラマさながらの経験。

そんな時でも、ささえてくれた女性が愛すべき妻となり、仲間
と会社をつくった時は長女の出産にも行けず、妻の両親からきつ
く怒られた。
今では、4人の子供も社会人になり、お酒を飲みかわす頃にな
っていた。

話は再び現在に戻るが、老人介護の道にすすんでいる今、高校
時代のおもいがつづけられることは幸せなのかもしれない。

今の仕事が好きだからと、高校時代の友に言える自分でいつま
でもいたい。